はじめに
三菱総研DCS 桐生です。当ブログ「DCS blog」の開設において検討や構築などの全般を担当していました。
今回は「DCS blog」の開設を振り返り、企業ブログの始め方についてお話します。
企業ブログは様々な人が記事を執筆するため、個人ブログにはない企業ブログ特有の検討事項が存在します。今回は企業ブログ開設に最低限必要な検討事項や作業内容を5つのステップにまとめています。
企業ブログの話ですが、個人ブログの開設にも役立つと思いますのでぜひ読んでみてください。
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目次
- ブログ開設の背景
- STEP.1「コンセプトを作る」
- STEP.2「世の中のブログを調査する」
- STEP.3「ブログシステムを構築する」
- STEP.4「見た目をデザインする」
- STEP.5「運用ルールを決める」
- おわりに
ブログ開設の背景
近年SNSを活用して情報発信を行う企業が増えてきています。弊社も社員が業務を通して得たノウハウを発信する場を作りたいという話から、企業ブログを開設することになりました。
企業ブログ開設は弊社にとって初めの試みでしたので、インフラ、ビジュアルデザイン、セキュリティ、運用など様々な観点について一から検討して作る必要がありました。
今回は企業ブログ開設に必要な内容を包括的に記載していますので、もし役割分担されている場合はSTEP.1と担当箇所のSTEPを読んでみてください。もちろん全部読んでいただけると嬉しいですが。
STEP.1「コンセプトを作る」
最初のステップではブログの方向性を考えていきます。
個人ブログは一人で意思決定して運用するので書きながら徐々に作ることも可能です。しかし、企業ブログでは立場や役割、部門などが異なる様々な関係者がいますので、構築の途中で意見が割れたり方向性があやふやになる可能性があります。また多数の人が記事を作成するため、仕様を頻繁に変更すると意思決定やガイドライン修正などの修正負荷が大きくなります。そこで最初にブログの方向性を決めて関係者や執筆者に明示することが必要となります。
- 目的と狙い
ブログ開設の目的とねらいを明確にします。
- 何のためにブログを公開するのか?
- ブログで何を伝えたいのか?
- どんな印象をもってほしいのか?
- どんな人に見てほしいのか?
- 要求や要件
ブログに関する要求や要件を洗い出します。下記の項目は例であり、企業の背景や開設の目的によって必要な項目は変わります。
- どれくらいの期間で構築するのか?
- どのような役割や部署の人が書くのか?
- 何人くらい使用するのか?
- セキュリティで押さえておくポイントは何か?
- ターゲットにとっての見やすさ、読みやすさは何か?
- コストはどれくらいかかるのか?
- コンセプト
目的、ターゲット、要求、要件をもとにコンセプトを決めます。今回は当ブログをもとに説明するため、当ブログのコンセプトを下記に書いておきます。
- スモールスタート
構築期間が短いのでありものを利用して作業量を抑える。 - DCSらしさと楽しさ
弊社らしさとともに技術に向き合うことや情報発信することの楽しさが伝わるようなビジュアルデザインにする。 - 統一感
複数部署の多数の人が書くため、表記方法に必要最低限のルールを設ける。 - 簡単な運用
運用負荷を下げるために、ブログの運用機能が充実しているサービスを利用する。
- スモールスタート
上記の内容は頭の中だけで考えるのではなく、書き出して整理することが重要になります。この後のステップで何か選択が必要になった場合、これらの内容を見返して決定します。
例えば「DCS blog」はコンセプトの「楽しさ」を表現するために、弊社公式サイトよりもあえて明るい色をメインカラーとして選択しています。ただし、「DCSらしさ」や「技術に向き合う」のイメージからかけ離れないように、メインカラーはロゴと同じブルー系統の色、サブカラーは落ち着いたグレー系統を選択しています。このように何かを決定する際にはコンセプトに基づくようにします。
STEP.2「世の中のブログを調査する」
各企業ブログや大手ブログサイトを調査します。
ゼロからイチを生み出すことは難しいので、コンセプトを実現するために必要な要素をストックするために調査を行います。
- 調査
STEP.1で決めたコンセプトを頭の隅に置いて「ブログのトレンドや共通点は何か?」「ブログから受ける印象とその要因は何か?」という観点で見て、アイデアの要素やトレンドをストックしていきます。
- 記事の内容
- 書いている人の役割
- フォント、行間
- レイアウト
- 配色
- 各ページの導線
- 画像イメージ
- 利用しているブログサービス
この後のステップでは、ストックした要素やトレンドを参考しにしてブログの構築やデザインを行います。
例えば「DCS blog」におけるフォント、フォントサイズ、行間は調査した内容を参考にして決定しています。もちろん調査内容をそのまま反映するのでなく、当ブログの構成に合うように調整はしています。
STEP.3「ブログシステムを構築する」
ブログを開設するためには、ブログシステムの構築が欠かせません。どのようなブログサービスやソフトウェアを利用するか、はたまた一から作るかということを検討し、実際にブログの環境を構築します。
- ブログサービス選定
「DCS blog」ではブログの構築ではコンセプトの一つである「スモールスタート」を重視し、一から構築するのはなく、多様なテンプレートが使えるSaaSを採用しています。SaaSを利用することでソフトウェア以下の管理を省くことができ、「簡単な運用」にもなっています。ブログに関するSaaSには多くの種類があるので、STEP.1で考えた要求や要件をもとに比較項目を決めて選定しています。
- ブログの機能(記事検索、カテゴリ分類、タグ付け、SNS連携)
- 仕様(ブログ数、ユーザ数、容量、PV上限数)
- 運用(パッチ適用、権限管理、WF機能)
- セキュリティ(改ざん検知、SSL利用、管理IP制限)
- 価格(初期費用、運用費用)
- その他(MA機能、自社ドメイン利用)
- ブログ構築(SaaSの設定)
選定したブログサービスの使い方や設定方法については説明を省略しますが、個人ブログではあまり実施しないが企業ブログでは必要な設定を記載します。
- ドメイン設定
- アクセス解析
- 管理画面へのアクセスIP制限
- 企業ブログ特有の設定
また個人ブログにあまりない企業ブログならではの観点として、下記の内容も検討しています。
- ポリシー等の記載
- 見てほしいサイト(弊社の別サイト)へのリンク
- ブログへの導線(弊社公式サイトからのリンク)
- 問い合わせ先
STEP.4「見た目をデザインする」
テンプレートをそのまま利用するのも一つの選択ですが、企業ブログとして自社らしさをアピールするためにビジュアルデザインを行います。
- ビジュアルデザイン
企業ブログのビジュアルデザインで最低限必要なものについて記載しておきます。- メインカラー、サブカラー、バックグラウンドカラー
- ロゴ
- 各種画像(バナー、ファビコン、NoImage用画像)
- フォント、フォントサイズ、行間
- 文章の横幅※1
- 機能の間隔※2
- 細かい表示設定(目次、小見出し、プログラムコード、引用、画像の枠線)※3
- スマートデバイス対応※4
※1 大きすぎると視線の振れ幅が大きくなり読みづらくなります。
※2 トップ画像とタイトルの距離、本文とサイドバーの距離などを調整し、機能ごとにまとまりとして見えるように調整します。
※3 必要最低限ですが統一感を出すために表示に関する設定を入れます。画像の枠線は見落としがちですが、画像の余白や白い部分が背景に溶け込んでしまうことを防ぐために必要です。
※4 スマートフォンやタブレットでの見やすさやレイアウト崩れをチェックします。
「DCS blog」ではコンセプトの一つである「DCSらしさと楽しさ」および見やすさに配慮してビジュアルデザインを行っています。例えば、DCSのロゴでは会社紹介の公式サイトと区別するため、ブログ用の新しいロゴを作成しています。
これらのビジュアルデザインや画面操作については、画面サイズやOSの異なる複数のPCで、複数人の人に確認してもらうことが重要です。
STEP.5「運用ルールを決める」
これが最後のステップです。
複数部門の複数の人が執筆するブログなので、執筆のルールと承認フローを決めます。そして連載計画を立てて、実際に記事を書き始めます。
ガイドライン
誰でも記事が書けるようにするため、ガイドラインを作成します。ガイドラインには初めての人でも記事が投稿できるようにするための操作手順、記事のテーマ選定や内容についてのルール、複数人が書いた記事において「統一感」を出すための表記ルールを記載します。 表記ルールは過剰に設定すると執筆とレビューが複雑になってしまいますが、フォントサイズ、強調方法、目次のフォーマットなど、記事間で異なると読みづらくなるものについては最低限のルールが必要となります。また引用は執筆者として重要な知識ですので、詳細に書いています。承認フロー
企業ブログですので、会社の方針に従って承認フローを決定します。
「DCS blog」では技術的な観点とガイドラインの観点からチェックできるようなフローを設けています。連載計画
ブログでは一つの傑作記事を書き上げるよりも、定期的に更新していくことが重要となります。複数部門の複数の人が執筆する場合、定期的に記事を公開することは難しいです。数カ月先までの計画を立て、また不測の事態に備えて数本の記事をストックした状態で更新できるようにしましょう。
おわりに
以上でブログ開設までの準備は完了です。
この記事が今からブログをはじめようとしている方々のお役に立てれば大変嬉しいです。
またこの記事を書いている私自身、様々な企業ブログや個人ブログを楽しく読んで日々新しい技術やノウハウを収集しています。「DCS blog」もそのような場になればと思っています。