概要
三菱総研DCSで新技術の調査・検証を担当している諸星です。
前回の記事「広域画像データを分析してみた その1」では、広域画像データを活用して東京都品川区周辺の緑被状況を確認してみました。今回の記事では、前回確認した緑被個所の面積を求めるための準備をしていきたいと思います。
目次
前回に引き続き、今回も「LANDSAT-8」で撮影された広域画像データを活用していきます。 活用する画像データは2021年2月11日撮影のデータとしています。 画像データの分析には、「位置情報付きビッグデータの活用について考えてみた」でご紹介した「QGIS」を活用します。
検証は、以下➀~➄の流れでおこないました。検証に活用する広域画像データは、前回の記事を参考にBand2(可視光), Band3(可視光), Band4(可視光), Band5(近赤外)をダウンロードします。
➀ダウンロードした広域画像データ(Band2, Band3, Band4, Band5)を結合します。
これは、それぞれのBandを1枚の画像データとしてQGIS上で扱えるようにするためにおこないます。
メニューバーの「ラスタ」→「その他」→「結合(gdal_merge)」を選択します。
結合(gdal_merge)の画面が立ち上がりましたら、入力レイヤへダウンロードした画像データをすべて追加して実行を選択します。また、「各ファイルを別のバンドに格納する」をチェックするようにします。こちらにチェックをすることで、4つのバンド情報を持つ1枚の画像データを生成します。
処理が完了すると、結合された画像データが生成されます。
➁画像処理に関わるデータ量を減らすため、画像データを切り出します。
先ずは、前回の記事でご紹介した方法で品川区の行政界を追加します。
行政界が追加できましたら、
メニューバーの「ラスタ」→「抽出」→「範囲を指定して切り抜く」を選択します。
入力レイヤへ切り出しをおこなう画像データを指定します。
切り抜く範囲に関しては「レイヤから計算」→「shinagawa(*行政界データ)」を指定していきます。
処理が完了すると、切り出された画像データが生成されます。
➂フォールスカラー表示にします。
前回の記事でご紹介した方法で画像データのバンド順を以下のように変更します。
赤のBandへ Band4を割り当てることで、近赤外を描写します。近赤外(845-885nm)は普段人間の目では見えない光ですが、赤のBandへ設定することで描写されます。
赤のBand:Band4(近赤外)
緑のBand:Band2
青のBand:Band1
➃NDVI(正規化植生指数)を算出します。
NDVI値とは、Normalized Difference Vegetation Indexの略称であり、植生の有無・活性度を表す指標です。
NDVI値を求めることで、広域画像データをNDVI画像へ変換していきます。
メニューバーの「ラスタ」→「ラスタ計算機」を選択します。
ラスタ計算機が立ち上がりましたら、以下のようにNDVI計算式を入力していき、OKボタンを選択します。
計算式:(IR(近赤外) – R(可視域赤)) / (IR(近赤外) + R(可視域赤))
計算が完了すると、以下のようなNDVI画像データが生成されます。
➄NDVI画像データを見やすくします。
生成されたNDVI画像データを閾値を元に自動分類してみました。赤い個所が緑被の反射が強い個所を示してします。
このNDVI画像データを活用して面積を求めていきます。
今回は、産業技術総合研究所の提供している広域画像データ(LANDSAT-8より撮影)を活用して緑被の面積を求めるための準備をおこないました。
次回は生成したNDVI画像データを活用し、緑被個所の面積(ヘクタール)を求めていきたいと思います。
また、最終的には経年での緑被面積の変化を算出できたらと思います。
LANDSAT-8
2013年に打ち上げられ、USGS(アメリカ地質調査所)とNASA(アメリカ航空宇宙局)が運用する地球観測衛星
可視光
人間の目で見える領域(波長:380nm~780nm)の光のことです。
近赤外
人間の目で見えない領域(波長:800nm~2500nm)の光のことです。
フォールスカラー
植生の分布域や活性度を把握する際に用いる合成です。
NDVI
Normalized Difference Vegetation Index(正規化植生指標)の略称であり、植生の有無・活性度を表す指標です。