位置情報付きビッグデータの活用について考えてみた

概要

三菱総研DCSで新技術の調査・検証を担当している諸星です。

近年、新型コロナウイルス対策で急速に話題になっている位置情報付きビッグデータの今後の動向や利活用ソリューションついてご紹介したいと思います。位置情報付きビッグデータを活用したソリューションは、今後私たちの日常生活をより一層便利にしていきます。

位置情報付きビッグデータとは

位置情報付きビッグデータとは、座標情報(緯度・経度)を持つ膨大な情報のことです。
例えば、人の流れを示す人流データ・自動車の走行履歴・ポイントカード会員の購買履歴が有名です。人流データは、防災計画の策定や観光・交通施策の立案のための活用が目立ちますが、最近の感染症対策としては、「店舗の混雑状況の可視化」や「(オフィス等の)人の出入り状況の可視化」などに活用されています。ポイントカード会員の購買履歴は、企業が顧客ニーズに合ったマーケティング戦略を展開する際に重要なデータとなります。
従来の一般的なビッグデータ分析では、位置情報は特に重要視されていませんでしたが、最近は位置情報付きビッグデータの分析が目立ってきています。

主な活用事例

位置情報付きビッグデータの主な活用事例は、この5年で大きく様変わりしています。
米国では、位置情報付きツイートの位置情報とツイート内容を活用し、災害による被害範囲や大統領候補者の人気度を(電子マップ上に)可視化する取り組みが盛んです。
また、機械学習や様々な有識者の知見を取り入れ、位置情報からユーザー像を推測し、マーケティング分析に活用する応用的な取り組みもあります。例えば、位置座標情報から年齢や身長を推測したり、コミュニケーション度合の算出や感情分析までおこなおうといった取り組みがあります。

今後の活用について

位置情報付きビッグデータは、今後2-3年の間に急速に活用が進みます。
その理由として、政府の推進する「スーパーシティー構想」があります。スーパーシティー構想とは、日本政府が2022年までにAI・IoTやビッグデータを活用して最先端都市(スマートシティー)の実現を目指しているものです。今後の少子高齢化や地方の過疎化問題などの社会問題を解決する上でとても重要な施策です。
海外においても、スマートシティーの実現において位置情報付きビッグデータの活用が一般的であり、中国で昨今重要なキーワードとなっているのは「位置情報付きビッグデータ」とそれを活用する「GIS」です。
GISとは、マップ上へビッグデータの可視化ができるだけでなく、様々なビッグデータをレイヤーとして重ね合わせ、複雑且つ高度な分析をすることができるツールです。
例えば、街のあらゆる箇所に設置した様々なIoTセンサーから位置情報付きビッグデータを取得・AI分析し、リアルタイムにGIS上に可視化することで、様々な情報を一元的且つ多面的に分析できます。また、取得・分析した情報と電子地図データを重ね合わせることで、視覚的に社会問題を把握することができます。

図1.概念(位置情報付きビッグデータとGIS活用)

位置情報付きビッグデータの可視化・分析ができるプラットフォーム

簡単に、GISのオープンソースソフトウェア「QGIS」をご紹介します。
QGISとは、位置や空間に関する様々なビッグデータや地図データ等を結び付け、複雑な解析や分析をおこなうことができるプラットフォームです。

QGISの活用事例

QGISを活用することで、様々な情報(店舗の位置、人口密度、施設の位置等)と地図情報を連携し、一元的・多面的な分析をおこなうことができます。
近年では、航空機・ドローン・人工衛星等から撮影した位置情報付き観測データと地図情報を連携し、可視化や解析をおこなうのに活用されることが多いです。従来までは、航空写真の扱いがメインでしたが、近年は衛星画像データの可視化や解析に利用されるケースが増えています。その理由としては、衛星画像データは安価であり、広範囲を撮影できるところにあります。
QGISの一般的な事業用途としては、以下のようなものが考えられます。
・様々な情報と地図情報とを連携し、サプライチェーンの見直しを検討
・MaaSの導入検討に活用
・新規に出店する際の商圏分析に活用(エリア・マーケティング、営業支援)
・物流の効率化
・衛星データを活用した環境モニタリング(緑地の増減を監視)

さいごに

今回は、位置情報付きビッグデータの今後について簡単にご紹介しました。
数年後には、街の様々な箇所に設置したIoTセンサーより動的なデータを取得・AI解析し、GIS上にリア ルタイムに可視化するといった活用方法が増えてくると思っています。
次回からは、より具体的に位置情報を活用したソリューションに関して発信をしていきたいと思っています。

用語解説(付録)

MaaS

MaaSとは、Mobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービズ)を省略したもの。多様な移動サービスを一つのサービスとして統合し、一括して予約と決済ができるサービス。