ITエンジニアの皆さん。社外研究会で「キャラ変」してみませんか?

はじめに

三菱総研DCS PMO部の村田です。2021~2022年にソフトウェア品質管理研究会(SQiP研究会)に参加いたしました。今回は、その活動に至った背景や約1年間の活動の様子を少しだけ紹介いたします。

目次

Software Quality profession(その頭文字「SQiP」を取り、スキップと呼びます)は、実践的で実証的なソフトウェア品質技術・施策の研究・普及を目的として、日本科学技術連盟*の下に設置されたソフトウェア品質向上のための活動です。 SQiPは、「ソフトウェア品質を良くしたい」という思いを共有する方なら、誰でも参加できるオープンな場です。 

*日本科学技術連盟: 科学技術ならびに経営管理技術の振興に必要な諸事業を総合的に推進し、人材の育成を図り、もって産業と学術・文化の発展に寄与することを目的とする法人


私の参加した 研究コース2「ソフトウェアレビュー」は第37年度(2021年度)のプレゼンテーション賞と優秀賞のダブル受賞となりました。

みんなで作成した論文はこちらになります。


ステークホルダーのアクションに着目したレビュー観点導出手法~今日からあなたも上級レビューア! 『SAKE』の提案~  


▼成果発表資料

参考:成果発表会「受賞論文」一覧 

社外研究会とは?

三菱総研DCSは、人材育成の一環としていくつかの社外研究会活動に参加しております。

ご存じかと思いますが、まずは社外研究会について簡単に説明いたします。文字通り「会社の外で研究活動をすること」です。

広い意味では、ボランティアとか、外部セミナーへの参加なども含まれますが、私が参加したのは日本科学技術連盟さんが複数の企業に声掛けをして参加者を募っている研究会となります。

察しの良い方であれば「つまり異文化交流会みたいなものね。」とイメージできるかと思います。異文化という言葉を使ってしまうと少し怪しげな雰囲気がありますが、おおむね正しく、ICT業界の企業があつまって決まったテーマで議論を交わします。同業他社はライバルです。しかし、同じ業界だからこそ同じ悩みを抱えていることが多いんです。

ICT業界は研究会とかユーザーコミュニティ活動が他業界と比較すると活発なほうだと思います。個人でも参加できるものはたくさんありますので、最近ちょっと仕事がつまらなくって、と思っている人は是非足を運んでみてください。


SQiP参加のきっかけ

上司からSQiPの参加を勧められたときには「ええっ!私ですか?」なんて大げさにリアクションをしたのですが、正直なところラッキーだと思っていました。

社内で解決しなければならない課題がテーマとして挙がっていたことはもちろんですが、過去にも同じような社外の研究会に何度か参加しており、そのメリットや楽しさを十分に理解していたからです。

こんなことを書いていいかわかりませんが、長年一つの企業に勤めているといろいろとしがらみができるんですよ。ほら、芸能人でもキャラ変更に苦労するパターンがあるじゃないですか。地球外の惑星から来たとか、不思議ちゃんキャラとか。一度大衆に受け入れられるとイメージを変えるのは至難の業です。

社内でも全く同じことが起こります。知らないうちにあいつはこんな人間でこんな仕事ならできるよねというイメージが出来上がってしまうのです。まあこれはこれで楽ではあるのですが、そのイメージがきっかけで、自分のやりたかったことってこれだったかなーなんて悩む夜もあるわけです。

そして毎日同じような人と顔を合わせて同じような仕事をすると慣れも出てきます。慣れることはよいことでもあるのですが、甘えとか惰性という方向に進んでしまうとモチベーションは下がり、仕事のクオリティも落ちてしまいます。

しかし社外研究会は皆さんはじめましてです。つまり、どんなキャラクターでも問題ないわけです。三菱総研DCSという枕詞の制約はもちろんありますが、自分の意見を述べたり、他人の意見に感銘を受けたり、すごく優秀な人達と議論できるのはとても貴重な体験です。


論文の概要

私は全社のプロジェクトの品質管理を担当しています。プロジェクトの品質管理といってもさまざまなものがありまして、例えばテストと欠陥数の推移とか進捗管理などはイメージしやすいかと思います。

品質管理を担当する前は企業のシステムの保守やクラウドサービスを使った開発を担当しました。ここ最近はシステムの管理や保守が中心で、ハードなプログラミングはやっていませんが、こう見えても若い頃は結構プログラムも書いていたんです。PHPとPostgreSQLでWebシステムを使ったり、JavaとかC#でアプリ作ったり。

私たちが若い頃はね、今と違って全然情報なかったからねぇ。経験のない技術や言語を使うってなったらそりゃーもー。。。ああ、すみません。年を取ると隙あらば自分語りをしちゃうんです。

さて、話を論文に戻しまして、今回参加した研究会のテーマはレビューです。

1年かけてみんなで作成した論文なのであまり省略すると怒られるかもしれませんが、3行ぐらいで説明すると…


 レビューは有識者がしたほうがいいんだけど、有識者がいなくてもレビューができるような技法を考えました。具体的にはステークホルダが興味のあること(関心ごと)に着目してレビュー観点を導出し、レビューをする。それだけだと不足観点があるかもしれないので、体系的に整理しレビュー観点を補完しました。


という内容です。

ステークホルダの関心ごとに着目したという点が新しく、これがSAKE methodの名前の由来になります。

ちなみにSAKEは本技法をそれっぽく英訳した『Stakeholder Action Kanshingoto Extraction method』の頭文字からとりました。

発表資料の一部です。レビューの悩みは尽きません。。。

▼ステークホルダーのアクションに着目したレビュー観点導出手法~今日からあなたも上級レビューア! 『SAKE』の提案~


過去に私が参加した研究会と比べてみても、今回の論文は良い仕上がりになったと思います。内容がわかりやすいし、どの会社でも適用ができます。おそらくどの企業でも意味のあるレビューをするためにいろいろと悩まれているのではないでしょうか。特別なツールは不要ですので是非ご活用ください。


研究会の様子

活動期間である約1年の間に30回以上は会議を行いましたが、すべてオンラインでした。これまで参加した研究会では、会議のあとはたいていどこかの居酒屋に繰り出して、お互いの生き様みたいなのを交換しながら交流を深め、論文を書き上げていたのです。

相手のことをよく知らないのに腹を割って話せるわけないと思っていたのですが、オンラインでもしっかり議論ができるものですね。もちろんオンラインならではのもどかしさみたいなものはありますが、そのマイナスを打ち消すくらい良いところがたくさんありました。


参加された他のメンバーも皆さん意識も高く経験も豊富で大変勉強になりました。論文もさることながらこう言ったところで刺激を受けるというのはとても良いことだと思います。

『私たちの若い頃は~』という言葉から始まる内容は大抵マイナスの印象を持つものばかりですが、ハキハキと意見を述べる若い人たちを見て、わたしも知らない分野の仕事を割り当てられて、慣れない英語のサイトをさまよったことや、個人が運営している掲示板などに質問を書きまくった事、ユーザーコミュニティーに思い切って足を運んだことなどを思い出しました。

いやーあの頃は本当に輝いていましたよね。今も頑張っていますが、あの頃にはかなわないでしょう。なんなんでしょうね、若い時のあのキラキラって。



研究会を振り返って

エンジニアの方々は、こういったコミュニティーに参加してみたいのだけど、業務が忙しいとか上司が許してくれないというケースが多いのではないでしょうか。私も昔は上司に言いづらかったんです…。

もしこれを読んでいる上司のかたがいたら、部下にもう一歩、歩み寄ってくださいませ。若い人たちは私たちが想像している以上に、自分の意見を飲み込んでしまいます。

普段コミュニケーションがとれていると思っても、積極的に背中を押してあげてください。

また、本人に意思はあっても周りの環境が足かせになって伸び悩んでいる人が多いのかもしれません。日々の業務は大変だと思いますが、少しだけ外に目を向けることで見えてくるものがたくさんあります。

機会があればまた何かしらの社外研究会に参加したいと思っています。もしかするとどこかの研究会でお会いすることもあるかもしれませんが、その時はよろしくお願いいたします。


さいごに

肝心のキャラ変ですが、今回はウィットに富んだジョークでメンバーの緊張をほぐしつつ、研究テーマに対する鋭い洞察と論理的思考でチームをガンガン引っ張るキャラクターで頑張るつもりだったんですけどね。

ジョークはスベるわ、みんなにたくさん助けてもらうわで、なかなかキャラ変は難しいですね。次はハードボイルドな感じで行こうと思っているので、今から少し準備しておかないと。。。

私が参加したSQiP研究会は来年度で39回目を迎えるそうです。今回はオンラインとオフラインのハイブリッド開催かつ、1泊2日の合宿形式が復活され、更なる交流の場を増やすということです。

興味がある方はぜひご参加ください。上司のかたも、伸ばしたい部下がいたら声をかけてあげてください。

ソフトウェア品質管理研究会:https://www.juse.or.jp/sqip/workshop/