下町DX ~身の丈に合った技術で革新を~

はじめに

東北ディーシーエスの内田と申します。当社はDCSの関係会社で、仙台を拠点に東北エリアのソフトウェア開発に取り組む企業です。
私はDCSで長らくプロジェクトマネージャーを務め、3年ほど前に当社の社長に就任しました。また、10月から新設されるDCS東北支社長も兼務いたします。

タイトルから小説のパクリみたいで申し訳ございません。本来、私の専門分野は「プロジェクトマネージメント」ですが、この手の話は本でもサイトでもどこでも情報が得られる世の中です。
今更正論を書いたところで皆様に響かないと思いますので、控えさせていただきました。
今回の題材は、職場環境がガラリと変わった私が目にしたこと、やってきたことを素直にご紹介させていただくものです。専門外での投稿となりますので、多少外れたことを言ってる点もあるかと思いますがご容赦願います。

目次

  1. DXの路地裏で・・・
  2. まずは足許から・・・
  3. 自社製ERPへの挑戦
  4. 中小企業のDXへ向けて ~中小企業のミカタ~
  5. 最後に ~コボラーの方々へ~

下町DX

 

DXの路地裏で・・・

今、巷ではDX(デジタル・トランスフォーメーション)ブームに沸いてます。
ITに関する企業様向けプレゼンテーションといえば、どこもかしこも「DX」の文字で溢れています。この状況は、我々のIT業界にとっては、またと無い好機であり、大きなビジネスチャンスといえるでしょう。
王道であるDX・・・しかしその王道の路地裏で、迷子になったり、呆然と立ち尽くしたりしている企業様が沢山いる事を、皆様ご存知でしょうか?
そして気が付けば、2025年の崖がもう直ぐ足許まで迫ってきています!

私はDCSへ入社以降、多数のお客様のシステム開発に携わってきましたが、いずれも大手企業様ばかりでしたので、当時の私のままだったら、今のこの現状に気づく事はなかったと思います。
たとえ気づいたとしても背を向けていたかもしれません。
ところが、東北ディーシーエスの社長となった私は、地場の中小企業様と接するうちに、この現状と東北地域におけるビジネスチャンスに気づいてしまったのです!

まずは足許から・・・

私が社長に就任して間もなく目にしたのは、20年前の思い出深きDCSの姿でした・・・

勤怠管理、稟議などの報告書類は全てハンコがなくては手続きが進まず、DCSへ報告する書類などは社内便の移動日数を加味すると、回付してから戻ってくるまでに約1週間掛かっておりました。
それは、1週間コミットできない(仕事が遅れる)事を意味します。

これは、ほんの1例です。
ベテラン社員の方なら、ほっこりとした懐かしさを感じるかもしれませんが、IT技術に囲まれ育った若手社員の皆さんには、ちょっとビックリな話ですよね?

一体何故、そんな事になっていたのでしょう?


それは、経営サイドが悪い訳ではありません。勿論、社員もです。
事務手続きを変えたくても、そのための予算が確保出来ないのです。社員50名程度の会社では、市販のERPパッケージを導入するにしても、ライセンスやインフラに関わる維持費が割高ですし、そもそもパッケージ導入に伴うBPR検討要員が捻出できません。むしろその程度の人数なら、手作業で処理した方が安上りで早いということなのです。

こういった状況は、当社だけなのでしょうか?


いいえ、それは国内の中小企業のかなりの会社様が同じ問題を抱えていると言えるでしょう。

自社製ERPへの挑戦

1)身の丈に合った技術で革新を・・・

ご承知の通り東北ディーシーエスはIT企業です。技術者は沢山おりますので、追加投資をせずに開発、並びに運用ができる環境さえ整えば、自社製のERPツールが作れます。
そこで白羽の矢が立ったのが、今やロングセラーとなった皆様ご存じのEXCEL-VBA(Visual Basic for Applications)、いわゆるマクロです。これを聞いて今時?と思われる方も沢山おられるかと思います。
私は以下に記載した通り、今だからこそ、、、と思うのです。

現在、国内の企業でEXCELを使っていない会社なんて、もはや1社も無いのではないでしょうか?
よって、EXCELは今後も世の中から無くなる事はない(無くすことが出来ない)と言えるでしょう。言い換えれば、VBAで作成したツールは、まだまだこの先も、これからも使い続けることができるという事です。
そして何よりも、EXCELさえ持っていれば一切の追加ライセンスが必要なく、誰もがVBA作成ツールを利用できるという大きな利点があります。
外部へのツールの横展開を考えると、これ以上の最適な開発環境はありません。

また、VBAは、バッチ系処理は当然の事、作り方によってはオンラインの会話型処理も容易に作れます。EXCELのシートはデータベースとして使用することができ、書類など、事務作業に必要なIOにも使えます。初心者でもプログラムを作る事ができますが、かなりの高スキル者でも納得のいくプログラミングができます。
まさに、誰もが満足できるオールインワンの「魔法の言語」なのです。
ただ、1つだけ気を付けなければならないのは、個人プレーにならないことです。
敷居が低いのでいつでもどこでも簡単にシステムが作れることから、俗人化する(レガシーシステムとして取り扱われる)懸念もあります。
組織としてチームを作り、仕様を明確にすればDXの趣旨から外れることはありません。

昨今、次々に新しい技術が登場し便利になっています。(消えてゆく技術も沢山ありますが)それ自体は大変良いことで、本来あるべき姿と思いますが、それは、王道の仕事。
中小企業には身の丈に合った技術で革新を図ってゆくのがBESTであると私は考えます。


2)20年の遅れを取り戻す

私は若い頃よりVBAのヘビーUserであったため、僭越ながら社内でもトップクラスのスキルを保有しているものと自負しています。この技術力を伝承すべく、約2年を掛けて若手社員を育成しながらチームを組成し、トップダウンで社内BPRを推進してきました。勿論、会社経営が主務ですから空いた時間を使ってですが・・・。
完成したツール群は30種類を超え、少し大げさですが、今やDCSのBASICS機能(注)と肩を並べるレベルまで進歩し20年の遅れを一気に取り戻せたと評価しています。

中でも、ワークフローについては、DCS役員の方々からも使い勝手が良いとお褒めの言葉をいただいており、機能的にも市販のパッケージと遜色ない出来栄えです。

そして、この取り込みにより、会社にもたらしたものは、単に会社のデジタル化だけではなく、若手社員の意識改革です。
この作業を通じ、超上流工程であるコンサルティングの領域にまで踏み込み、現場の専任社員と対等に調整ができるような社員達が育成できた点は、何よりも代えがたい財産となりました。

事務効率化ツール

※注)BASICS機能:DCSで使われている、伝票申請、営業・プロジェクト管理、事業管理、経営管理、会計の5つのサブシステムから構成されている社内システム

中小企業のDXへ向けて ~中小企業のミカタ~

DXは①デジタイゼーション、②デジタライゼーションの2段階を踏んで3段階目のX:トランスフォーメションする(会社を変える)といわれています。
冒頭でお話しした通り、殆どデジタル化が進んでいない中小企業様は一気に「X」までできるはずがなく、まずは①デジタイゼーションもしくは②デジタライゼーション(広義の意味でBPR)まで引き上げる必要があります。
そのために当社が作成したEXCEL-VBAによるツール群の横展開は、自他ともに良い効果を生みだせるものと期待しています。
他社様は、余計なコストを掛けることなくDXに向けた第一歩を踏み出すことが出来ます。
何といっても、Officeさえあればそのまま直ぐに導入できるのですから、これに勝るツールは世の中のどこを探しても存在しないでしょう。
当社は、これをきっかけにビジネスを拡充することができますし、地場のIT産業に貢献することが出来ます。
そして、何よりも、社員の育成に計り知れない程の有益な効果をもたらしてくれます。

現在、社員の育成も兼ねてパイロット的にDCS、ならびにDCSの他のグループ会社様へ横展開を進めており、ご好評をいただいている状況です。
社員達も自分の力で新たなビジネスを切り開いてゆく楽しさを覚えながら、スキルと自信をつけております。

世の中の大きな流れで、公共、大企業が先陣を切ってDXを進めていく中で、当社はDXに踏み出せない中小企業様の革新を支えてゆく立場で、DX全体を盛り上げて行けたら良いと考えています。

おまけ ~コボラーの方々へ~

今ではレガシーとして扱われるCOBOLですが、その需要も着々と縮小に向かい、コボラー(注1)の方々におかれましては、OPEN系システムへのスキルトランスファーに大変ご苦労されている事と思います。
EXCEL-VBAのコードはCOBOLコードと親和性が高く、コツを覚えればすぐにコーディングができるようになります。
代表的な、マッチングやキーブレイク、集計などもCOBOL感覚で作ることが可能ですので、これまでのコボラーの皆様が培ってきた匠の技の魂をここにぶつけることが出来るのです。(レガシーにならないように注意が必要ですが)コボラーからマクラー(注2)へのスキルトランスファーは比較的簡単にできますので、是非挑戦してみて下さい。

そして、ご興味のあるコボラー仲間の方は、ぜひ自社の「下町DX」にチャレンジしてみてませんか?

※注1)コボラー:COBOL技術者
※注2)マクラー:VBA(マクロ)技術者・・・(本記事限りの造語です)