データ活用人材育成に関して執筆しました

はじめに

三菱総研DCSの 執行役員テクノロジーオフィサー大原とデジタルイノベーション部山下です。

2022年4月28日に弊社が執筆協力した「研究開発部門へのDX導入によるR&Dの効率化、実験の短縮化」(技術情報協会)が発刊されました。パートとしては第3章 第6節 「データ活用人材育成のコトハジメ」を担当しています。

今回は、執筆テーマとしたデータ活用人材の育成について、一部ではありますがご紹介したいと思います。

    目次
  1. 執筆のきっかけ
  2. データ利活用の重要性と人材育成
  3. データ利活用人材を育成するには
  4. 最後に
 

執筆のきっかけ

弊社では、ビッグデータがブームとなる前の2010年から、データ分析の関連技術力を強化しデータ利活用で企業の業務効率化や課題解決を推進していくことを目的として、データサイエンス事業を開始しました。まず実施したことは、社員のスキル向上です。今までデータ分析をしたことがなかった人たちに向けて、『データ分析ツールを使って必要な分析を実施し結果を報告書にまとめる』という一連の作業をスムーズに実施できるように社内研修を作成・実施しました。そして、2011年4月にデータサイエンスグループという部署を作り、データ分析サービスを実施できるようになりました。ビッグデータという言葉が世間的に知られるようになったのが2011年の後半からだったので、ブームを一歩先取りした取り組みになりました。

Google Trendsによるビッグデータブーム時期(出典元:GoogleTrends

その後も年2回のペースで社内研修を実施していく中で、個人ごとの志向や癖を見ながら効率的にスキル強化領域を見極める等のノウハウが蓄積されました。ビッグデータがブームになる中、社外向けにも研修サービスを開始すると、セミナーなどでデータサイエンティスト育成について講演する機会が増えました。そのセミナー情報をネット検索で見つけた技術情報協会から、月刊誌「研究開発リーダー」にビッグデータ特集をする中で人材育成について寄稿してほしいと打診があったのが、執筆のきっかけでした。2014年のことです。それから、技術情報協会でデータサイエンスやAI関連の人材育成に関する執筆や講演の取り組みがあると弊社にお声がけいただくようになり、今回の執筆になりました。

以降では、執筆した内容の一部をかいつまんでご紹介させていただきます。

データ利活用の重要性と人材育成

世の中がSociety5.0※1へと移る中で、2019年に政府からAI戦略が発表されデジタル社会の「読み・書き・そろばん」に当たるものが「数理・データサイエンス・AI」であると言われるほど、データ利活用はあらゆる分野で必須となっています。それを強制的に推進したのが新型コロナウィルスであり、リアルに人が流動することができない世界でオンライン・バーチャルの活動が活発化しました。それはすなわち、人が行う様々な活動がデジタル化・データ化され、そのデータを有効に扱う必要が出てくることを意味します。同時に、AIなど先進のデジタル技術が次々に利用され、人力(アナログ)で実施した場合と比べて短期間で効果を出す場面も増えてきており、企業は、ただの掛け声ではなくDX(Digital Transformation)に取り組む必要性に迫られています。DXを推進するには、デジタル技術やデータ活用について理解しビジネスに適用できる人材が必須ですが、自社にふさわしい人物を採用するのは難しいこともあり、自社ビジネスを理解している人をデータ利活用人材に育成していくことが急務となっています。

※1:

Society5.0とは、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(超スマート社会)」

(出典元:Society 5.0 - 科学技術政策 - 内閣府 (cao.go.jp)

データ利活用人材を育成するには

組織としてデータ利活用を推進していくためには、企業が取り組みを通して「どうありたいか」が鍵となります。個人のリテラシー向上やスキルアップだけではなく、企業文化に融合する組織作りも検討することが重要です。

データから得られる知見使ってビジネスを発展させることこそ、データ利活用の目的です。ビジネス上の課題を明確にした上で、データで解決すべき課題を設定し、分析計画を策定していきます。そこからデータを収集・クリーニング・加工し、分析した結果を精査してビジネスへと還元していくのですが、そのプロセスの中では下図のように、求められる能力(スキル)領域が異なります。

データ活用プロセスで必要とされる能力
データ活用プロセスで必要とされる能力

但し、これらすべてのスキルを保有するスーパーマンを育成・調達するのはまだまだ至難の業です。では、どうすればいいのか。ポイントはこれらのスキルをカバーするチームを組成するような育成・調達を行うことです。そして、チームとして円滑に取り組みを推進していくには、主に以下の3つの役割が必要となります。

  • データ活用コンサルタント
    • ビジネスや業務を理解し、データ活用の取り組みを推進する
    • 主に課題設定や計画立案、結果のビジネス還元を担う
  • データ分析エンジニア
    • 統計や機械学習等の手法を使って、大量のデータから解析・可視化やモデル構築を行う役割を主に担う
    • 分析工程の準備となるデータ収集や前処理についても実施する
  • データ活用推進マネージャ
    • 経営陣や各部署に対し、データ活用プロジェクトに対する合意形成や協力を得るためのパイプ役となる
    • データ活用コンサル、データ分析エンジニアをフォローするなど、プロジェクトマネジメントを担う

データ利活用人材の育成は、これらの役割をバランスよく、そしてそれぞれのメンバーの特性に合わせて計画的に育てていくことが鍵となります。当社では、データサイエンス事業を開始した初期から、研修の内製化やスキル可視化を行ってきました。スキル可視化については、当社にとって必要なスキルおよびレベルを定義し、個人のスキル習得状況をレポートにより可視化するスキルマップを独自に運用することで、計画的な育成を目指しています。

当社で作成運用するスキルマップ
当社で作成運用するスキルマップ

最後に

ここではほんの一部のご紹介となりましたが、今回出版される書籍で当社が執筆した一節では、「データ活用人材育成のコトハジメ」というタイトルで、弊社の人材育成やお客様へのご支援のなかで得た知見をもとに以下の内容を体系的に整理しています。

  • データ利活用を推進するために必要な役割とは
  • その役割を担う人材に必要なスキルや育成方法
  • 組織自体の成長を促すための取り組み方

今後もより多くの企業でデータ利活用が文化として醸成されるよう、取り組みのお手伝いをさせていただければと思います。