はじめに
三菱総研DCS 技術戦略部UXデザインGrの桐生です。
新型コロナウイルス(COVID-19)の影響でニューノーマルが求められる中、ビジネスにおける打合せやセミナーをオンラインで実施する方も増えているのではないでしょうか?
当社ではプロジェクトにおけるサービスのアイデア創出をお客様に参加していただくワークショップ形式で実施することがあります。従来は10~20人のお客様に集まっていただき対面形式でのワークショップを開催していたのですが、コロナ罹患のリスクを考えると従来通りの方法での開催は困難です。
そこで、コロナ対応としてオンラインワークショップを社内メンバーにて試行しましたので、今回はその話をします。
オンラインワークショップは有効?
オンラインでのやりとりは人が物理的に会わないので、コロナ罹患のリスクはありません。
しかし、オンラインワークショップの話が出たとき、真っ先に「UXデザインプロジェクトを進める上でワークショップのオンライン開催は対面開催の代わりとして有効か?」という疑問が浮かびました。オンラインワークショップでは出てくるアイデアの量や質が落ちるかもしれないという漠然とした不安があったからです。
アイデアの量や質を落とす原因として、下記のような3つの想定をしていました。
- 慣れないオンラインツールによるアウトプット量の低下
- オンラインによる参加者同士のコミュニケーションロス
- トラブルによる進行の遅延
オンラインワークショップを実際に試行した結果、想定が的中した部分もありましたが、杞憂だった部分やオンラインならではのよい部分も発見できました。
当記事ではまずワークショップの概要を説明してから、アイデアの量や質を落とす原因(3つの想定)の検証結果についてお話します。
ワークショップの概要
今回は試行ということで社内から参加者を募って、「課題解決のためのアイデア創出」のオンラインワークショップを開催しました。
「社員が健康的に働ける会社づくり」というテーマに対して仮想の会社の社員として、課題の発見とアイディエーションを行うワークです。 ワークの内容やスケジュールは大まかに下記のようになっています。
またオンライン環境は会議ツールとしてZoom(外部リンク)を、ホワイトボードツールとして同時作業が可能なMural(外部リンク)を利用しました。
Zoomで話をしながら、Muralを操作していくイメージです。
またトラブル対応は全体のワークに影響が出ないように、別の連絡手段で個別に受け付けることにしています。
アウトプットの量
まず「慣れないオンラインツールによるアウトプット量の低下」という想定についてお話します。 検証結果はアウトプット量はほとんど変わらないという結論になりました。
下記の図は今回のワークショップで実際に使ったMuralのボードです。詳細が見えないように縮小版を掲載しています。
今回は1チーム5人でホワイトボード上での合計作業時間は2時間程度でしたが、沢山の付箋が貼られています。
メインワークに入る前のMuralの操作方法習得を兼ねたアイスブレイクで、参加者はMuralの基本的な操作を問題なくできていたからだと思います。 ただし事後アンケートでは「操作に慣れるための時間があると、より一層ワークに集中できると感じた」といった声もあったため、事前に自由に触れる環境を公開したりする対策も必要だと感じました。
コミュニケーションの取りやすさ
2つめの「オンラインによる参加者同士のコミュニケーションロス」という想定は、参加者同士でも参加者とファシリテーター間でも的中しました。
参加者同士では話すタイミングの掴みづらさや隣の人へのちょっとした相談ができないため、沈黙が流れることがありました。また参加者とファシリテーター間では、ファシリテーターからは参加者が悩んでいるのか作業をしているのかの判断が付かず、声をかけるのが遅れることがありました。
ただ最近はテレワークが導入されてしばらく経ったおかげか、話が食い違ったり、会話が途切れたままワークが進まないということはありませんでした。
今回は1グループ5人と人数が多かったので、グループの人数を減らして1人あたりの発言チャンスを増やせば、コミュニケーションロスは軽減されるかもしれません。
トラブル対応
「トラブルによる進行の遅延」は一番心配していたことであり、実際に発生しました。
今回の試行で起こったトラブルは下記の通りです。
①音声が聞こえないし届かない
②ネットワークが繋がりづらいため会議ツールが使えない
③ホワイトボードツールがたまにフリーズする
①と②については1日目の朝に発生し、15分ほど開始が遅れることになりました。 メインの進行を止めないつもりで予めトラブル対応のために別の連絡手段と専任担当者を準備していましたが、途中からキャッチアップしてワークに入ることは難しいため遅延させるという判断になりました。
ただし一度接続できるとそのあとは問題なく利用できていたので、こちらもMuralの操作と同様に事前に試せるようにする必要がありそうです。また当日はアイスブレイクの時間を長めに取り、その間にトラブル対応してワークに参加して貰うということも必要そうです。
③については全員でホワイトボードツールに書き込む際に発生していたので、予備のホワイトボードを用意したり、紙に書き出してもらって後で入力するなど別の手段を準備しなければなりません。
その他の気づき
今回は上記以外にもたくさんの気づきを得たので、その中から3つほどピックアップしてご紹介します。
ワークの大きさ
事前の調査で1つ1つのワークを短くして細かく区切ることが重要ということを聞いていたのですが、まさにその通りでした。 1区切りの時間で「アイデアを書き出して、他の人の気になるアイデアには印をつける」というような2つの作業を入れると、片方の作業を忘れたり時間が足りなくなるという場面が何度か見られました。おすすめのタイムキーピング方法
上記のようにワークを区切るとタイムキーピングが難しくなってきます。 今回は進行中のワークの時刻を入れたら、それ以降のタイムスケジュールが算出されるExcelを作っていたのですが、一目で何分遅れているかが把握できて役に立ちました。オンラインならではのメリット
オンラインのワークショップは決して対面ワークショップの劣化版という立ち位置ではなく、オンラインならではのメリットもありました。例えば、調査内容を簡単にコピペして共有したり、絵を書くことに苦手意識があってもWeb上の素材などを使って表現したりすることが可能です。
おわりに
オンラインワークショップの試行を行う前は漠然と「UXデザインプロジェクトを進める上でワークショップのオンライン開催は対面開催の代わりにならないのではないか?」と不安でした。しかし、今回の試行ではオンラインワークショップでもはっと気づかされるようなアイデアがいくつも生まれ、またオンラインでの注意すべき点に見当をつけることができました。
試行後は上記で書いたようなポイントを押さえれば、オンラインワークショップでも対面型と遜色ないくらいのアイデアが創出できると感じています。