自己紹介
三菱総研DCSソリューションコンサルティング・セールス部コンサルティンググループの西原と申します。
私は、ITコンサルタントとしてお客様企業へシステム化計画の立案やデジタルトランスフォーメーション(DX)推進をご支援しています。
当社のリカレント教育(※1)施策の一環で、大学院(中央大学国際情報研究科)に2023年4月から2年間通学していました。無事に2025年3月に修士課程を修了することができましたので、新たな知識やスキルを得たいとお考えの皆さんに少しでも参考にしていただける実体験の情報提供ができればと思っています。
ちなみに、私は現在42歳(入学時は40歳)ですが、幅広い年代の方々が通学されている様子をみて、リカレント教育は自分のきっかけ次第でいつでも始められるものであると感じました。
※1:学校教育からいったん離れたあとも、それぞれのタイミングで学び直し、仕事で求められる能力を磨き続けていくことがますます重要になっており、このための社会人の学びのこと(厚生労働省, https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18817.html)
目次
大学院通学のきっかけ
当社制度の設立
2022年の秋に、社内の公募情報で「中央大学国際情報研究科の通学募集」が掲載されていました。当時の当社常務と国際情報研究科の設立に関与された教授がお知り合いだったことから、要請を受けて当社でも制度がつくられました。
- 入学金、授業料、書籍代、交通費等の大学院通学にかかる費用は全て会社負担(ただし、2年間分)
- 大学院に費やす時間は業務外の扱い(業務は原則通常通りに実施)
当社では、テレワークも導入していることから、これまで通勤にかかっていた時間を充てることで対応ができました。
中央大学国際情報研究科について
進展する情報技術を満足な法体系で担保するに至っているとはいえない現状において、情報学と法学の統合こそが情報社会が抱える諸課題を解決に導くと考え、設立された。 「情報学」と「法学」を統合し、社会のグランドデザインを主導する人材を養成することを目的としている研究科である。
個人の理由
大学院で学びたいと考えた理由が大きく2つありました。
理由①:社会人としてのかっこいい理由
私は、2020年4月から2023年3月までの期間で三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(MURC)に出向して、中堅・中小企業向けにITを活用した業務改革のコンサルティングを実施してきました。在籍していた部では、「よいインプットをして、よいアウトプットを提供しましょう」ということが方針の一つでした。
そのため、コンサルタントの皆さんが、大学院に通学されたり、セミナーに参加されたりしていることを間近にみて、インプット量の多さに驚かされました。自社へ帰任してからも継続的に学びたいと考えていたところに、この機会が得られたので、タイミングもよかったです。また、私自身、40歳という人生の折り返し地点、社会人としても中盤に差し掛かった今、後半戦に向けて活用できる知識を今のうちに得たいと考えていたため、その想いとも合致しました。
理由②:個人的な我が家の理由
当時、長男・長女が高校3年生・中学3年生の受験生となるタイミングでした。「勉強しなさい」と言いながらも、私自身がテレビやスマホ片手にそのような発言をしても説得力はなく…、反省する背景がありました。これではいけないと感じ、私自身も勉学に励もうと決意しました。同時に「オレは、一足先に勉強しているから」というプレッシャーを与えようとしていました笑
少し個人的な理由がありながらも、2022年秋に私は大学院への進学を決意しました。 私は2023年度に入学をしましたが、このようなブログを書くとは考えていなかったため、入学式には参加しておらず、写真も撮っていませんでした…。 翌年、長男が同じ大学へ進学したため、一年越しに写真を撮ったものを添付します。キャンパスは別でしたが、同時期に親子で在籍しているパターンも珍しかったと思います。
大学院生活
普段業務がある社会人の方々は、「時間」や「費用」の関係から両立が可能なものか懸念されることもあると思います。そのため、実際に私が過ごした2年間の「内容」を紹介し、どのように仕事と学業を両立させたのかについてお伝えします。
時間
・出願までの準備
私の場合は、「社会人特別入学試験(指定機関推薦)」でしたので、出願理由書(4,000文字程度)を作成し、口述試験がありました。出願までには以下のような1ヶ月弱で対応する必要がありました。
出願時には、自身の研究したいテーマが指導してもらえるかを確認するために、指導を希望する教授へのコンタクトも必要となります。私は、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」や「イノベーション」に関する研究を行いたいと考えたため、「AI」や「イノベーション」など様々な見識があり、内閣府の「人間中心のAI社会原則会議」議長や総務省の「自治体におけるAIの利用に関するワーキンググループ」座長も歴任されている須藤修教授に依頼をしました。
・入学後の生活
中央大学国際情報研究科の2023年度入学生は、20名(社会人:10名、学部卒業生:10名)でした。社会人の大学院通学というと、専門職大学院(ビジネススクール)でのMBA(経営学修士)取得の印象を持たれている方々が多いと思います。しかし、学部から進学された方や留学生もいるため、更に幅広い人材や年代が多くなっているのが実情です。
私の選択したコースでは、卒業要件として40単位が必要です。当時、業務の見通しが不透明な部分もあったため、とりあえず1年次に多くの講義を受講するようにしておきました。結果的に、週6のハードスケジュールとなりました。ただし、平日の講義は社会人への配慮からオンラインと対面のどちらでも選択可能となっていました。一方で、土曜日の講義は対面形式のみとなっていました。
大学院の講義ではディスカッションが活発で、学生や教授とのリレーション構築の観点からもなるべく対面で受講するようにしました。結果として、全体の80%以上は対面で受講していました。しかし、キャンパスまでの通学時間もかかることや業務都合で間に合わないこともあったため、私自身のなかで、講義受講の方法と基準を設けていました。その基準は下記の通りです。
・スケジュールパターン
出社時やテレワーク時、土曜日の平均的なスケジュールを掲載します。
- 【平日】通勤⇒通学
- 【平日】テレワーク⇒オンライン出席
- 【土曜日】通学
講義後、次回講義開始前までに課題提出期限が設定されていることが多いため、終わっていない課題は日曜日に実施することもありました。
・費やした時間の実績(1年次前期)
1年次前期(2023年4月から7月の4ヶ月間)で大学院の講義や課題等に費やした時間を算出してみたところ、1ヶ月あたり約70時間程度確保する必要がありました。1つの講座あたり12~14回の講義があり、各講義には課題もあります。ただ、ボリュームと提出期限は社会人の生徒も多いことから、教授の皆さんも配慮してくださっていました。
費用
私の場合、制度により費用は会社が全額負担してくれたことが、不安なく通学できた要因の一つでもありました。会社が全額費用負担してくれていたのは、同級生のなかでも私含めて2名だけでした。社会人の方でも、それぞれのライフステージによって、この学費を捻出することの難しさもあるかもしれません。
昨今、このリカレント教育に対しては、厚生労働省・経済産業省・文部科学省等が連携して、労働者の主体的な学びや事業主による人材育成への支援も行っています。事前に確認のうえ、有効活用できるかもしれませんので、参考情報としてリンクを記載しておきます
(参考)
厚生労働省.リカレント教育「主な施策紹介」:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18817.html(最終アクセス日:2025-05-08)
経済産業省.厚生労働省「教育訓練給付制度」「人材開発支援助成金」との連携. https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/reskillprograms/pdf/kannrenn.pdf(最終アクセス日:2025-05-08)
内容
・研究テーマ
私の研究テーマは、「デジタルトランスフォーメーション(DX)を中堅・中小企業にも浸透させる推進方法と人材育成に関する考察」として、自身の業務にも繋がる内容で論文を執筆しました。コンサルティング業務を遂行するなかで、特に中堅・中小企業がDXに取り組むハードルの高さを感じていたからです。そこで、中堅・中小企業にもDXを浸透させるために必要な「推進方法」や「人材育成」について、業務にも活かせるような研究をしてみたいと考えた背景がありました。
1年次には、指導教授のご指導もあり、修士論文の中間発表の位置づけでゼミ生それぞれが学会発表(情報処理学会第86回全国大会)を行いました。私は、DX認定制度のデータからDX推進に寄与する共通項を検討してみました。学会用論文の締め切りがお正月明けであったため、お正月休み返上で作成していましたが…、なんとかアウトプットを提示できました。そのおかげで、全国大会にて「学生奨励賞」を受賞いたしました。
2年次の修士論文の最終締め切りも1月の年明け早々で、またもやお正月休み返上で論文を作成していました。本来はもう少し計画的に提出ができればよかったのですが、お正月休み期間に提出しても最終チェックを実施してくださった指導教授には大変感謝しております。そのおかげで、無事に最終発表も乗り切ることができました。 2年連続で年末年始がこの研究で多忙であり、振り返るとよくやっていたなと考える部分もあります笑
・ゼミ
毎週土曜日の夕方が所属ゼミの時間でした。同期の方が私含め5名、1年次下の方が1名と指導教授の合計7名の構成でした(私がゼミ内では最年少)。教育機関・金融・広告代理店・デザイナーとそれぞれの業界におけるプロフェッショナルの皆さんでしたので、社会人の先輩方からの情報は貴重なものでした。社会人が大学院に通うメリットとして、人脈や横のつながりといわれていますが、まさにその通りであると感じた点でした。
入学した2023年度は、「生成AI」が普及し始めた年でもあり、ゼミでもスタンフォード大学が毎年発表している「AI Index Report」を輪読しました。『研究・開発』、『技術性能』、『技術的なAIの倫理』、『経済』、『教育』、『政策とガバナンス』、『多様性』、『世論』という章に分かれており、ゼミ生が業務に関連する部分をそれぞれ担当しました。数百ページにわたる英語の文章ですので、英語が得意ではない私は“AI”のお世話になりながら、まとめることができました笑
そして、AI関連の委員を歴任されている指導教授の情報提供もあり、最新の動向にふれることができました。指導教授が登壇された『【生成AIシンポジウム(生成AIが切り拓く未来と日本の展望)】』に参加させていただいたことも非常に貴重な機会でした。
情報処理学会の発表も論文の作成も、社会人として仕事と両立しながら乗り切れたのは、同じ境遇のゼミ生の皆さんがいたおかげだと強く感じています。私は論文の進捗が遅いほうだったのですが、先行する皆さんが100ページを超える論文を共有されていたため、とてもハードルが上がりました笑
当ゼミの論文は「100ページが最低ライン」と私が勝手に思い込んだこともあり、なんとか105ページ書くことができました。
・講義
国際情報研究科には、法律系の講義もあります。法学部出身ではない私は、ビジネス上でふれた民法・商法・会社法の一部の知識程度しか持ち合わせていませんでした。判例を確認するためにデータベースを活用した調査を行うことは、ビジネスにおいて事前準備を行うことに通ずるものだと感じました。たとえ業務にはすぐに直結しない講義内容であっても、未知の事柄に対して様々なツールを活用して、調査をするというプロセスこそがビジネスの根幹でもあると感じました。
その他
私が通っていた国際情報研究科のキャンパスは市ヶ谷駅の近くにあります。住まいのある横浜市内から約60分で到着し、行き帰りとも座れることが多いので、動画を見たり読書をしたりと、よい息抜きになっていました。帰りに乗換駅である新横浜駅で途中下車してジムへ通う習慣もできました。
加えて、キャンパスは国立競技場も近いので、土曜の空き時間にサッカー観戦を楽しむこともありましたが、17時の講義に間に合うよう後半途中で席を立たねばならず、試合が動く瞬間を逃すことも…。とはいえ、やることが多いなかでもスケジュールをやりくりし、アクティブに過ごせた時期だと感じています。
まとめ
最終的には40単位が卒業要件でしたが、週6日で通学する期間もあり、48単位取得することができました。会社に費用負担をしてもらっている背景からも、少しでも多くの内容を吸収したいと考え、できるだけ講義を履修するようにしました。
また、約20年前は親に学費を出してもらっていたにもかかわらず、当時は気づいていなかったことも多かったと、今になって反省しています…。
冒頭でリカレント教育は自分のきっかけでいつでも始められると書きましたが、学んだ内容を自身のビジネスで活用する期間を長くするためには、早めに始めることに越したことはないと思います。学生時代の私は気づいていませんでしたが、社会人の大学院生になってから、この重要性に気づきました。
ぜひ、主体的な学びを少しでもお考えの皆さんには一歩を踏み出していただきたいと思います。
最後にご家族の理解や支援も必要になるかと思います。 我が家の場合は、私が何をしているかに興味がなかったと思いますが…、その距離感がよかったのかもしれません。
そのような中でも、年末年始休暇に論文を執筆したかったため、帰省時に実家まで初心者マークを付けて新東名高速道路を運転してくれた長男。17時に業務を終えて、17時半の電車に乗らないと講義に間に合わないため、業務が少し延長してしまうと私の担当家事になっていたお風呂掃除と炊飯ができなくなります。そのような時には、結構な頻度で代わってくれた部活帰りの長女とサッカー練習前の次男。
これらのサポートも2年間の大学院生活を送ることができた要因ですので、この場で感謝したいと思います笑
次は、MBA取得を目指し、計画中です!
