はじめに
三菱総研DCSで新技術リサーチを担当している平山です。
この記事ではIT業界で最近話題になってきている「ローコード開発ツール」をご紹介します。このツール紹介に関する記事は2回に分かれており、前回に続き、Amazon Honeycodeを使った英単語学習アプリの開発について説明します。
- 1. はじめかた
- 2. 実際にアプリを作ってみよう
- 3. 英単語アプリに、どういうデータを入力するかを決めよう
- 4. ワンクリックで、自動でアプリ画面を生成してみよう
- 5. 生成された画面を確認してみよう
- 6. 必要な設定をしよう
- 7. モバイル画面を確認してみよう
- 8. アプリを公開してみよう
- 9. アプリをレベルアップ。自分宛にメールで飛ばして、暗記しやすくしよう
- 10. 入力候補を表示して、登録作業を快適にしよう
- 11. 完成
目次
目次の1-8までは前回ブログをご覧ください。 簡単操作のAmazon Honeycodeでプログラムを一行も書かずに英単語学習アプリを開発!(その1)
9. アプリをレベルアップ。自分宛てにメールで飛ばして、暗記しやすくしよう
Amazon Honeycodeでは、ルーチン作業を自動化することができます。例えば、英単語を登録後、しばらくしたら自分のEメールアドレスに確認メールが自動で届くというのはどうでしょうか。
まず、画面左側から、Automationsを選んでいただくと、この画面が現れます。自動処理を始める条件を「Automation trigger」(自動化トリガー)と呼び、現在4種類が用意されています。
- Date & Time Reached:指定した日時に達したら自動処理を開始
- Row Added or Deleted:テーブルに行が追加/削除されたら自動処理を開始
- Column Changes:列に変更が生じたら自動処理を開始
- Cell Changes:セルに変更が生じたら自動処理を開始
今回は英単語を登録後に忘れてしまわないように、登録日時の7日後にEメールアドレスにリマインドメールを送ることとします。 まず、Date & Time Reachedをクリックします。画面中央の「Select table」から、英単語一覧のテーブル名Collectionを選びます。左上に「Table or sheet not selected」と警告が出ていますが、テーブルを選べば警告は消えます。
Startsと書いてある設定ボックスが表示されます。いつ自動処理を始めるかを設定する画面です。今回は7日後に自動でEメールが届くようにしたいので、下記のように変更します。row dateを=[入力日]と設定するのは、英単語ごとに異なる登録日から7日後という設定にするためです。
これで自動化トリガーの設定ができました。次に、どのような自動処理を行うかを定義します。処理はActionと呼ばれます。Add actionsボタンをクリックします。
Add actionsボタンを押した後に、実行できるActionの候補が表示されます。今回は、メールを送信したいので、通知処理を行うNotifyを選びます。
- Notify: 通知を行います。
- Add a row: 行を追加します。
- Delete a row: 行を削除します。
- Overwrite: 上書き処理をします。
- Update or insert row: 行を更新/挿入します。
- Webhook: Webhookを利用した処理をします。
通知処理を行うNotifyを選ぶと、メールの宛先(To:)、件名(Subject:)、本文(Message:)を定義する画面が表示されます。 今回は、件名をReminder:とし、その後に「=(イコール)」を入力すると、件名に差し込めるデータが一覧で表示されますので、「英語」を選びます。こうすることで、通知されるメールの件名が、「Reminder: hamburger」のようになります。
続いて、本文(Message)に差し込む文章を定義します。本文に「=(イコール)」を入力すると、表示項目の候補がポップアップします。今回は、英語・意味・例文・説明の4つを入力することとします。「=(イコール)」を入力して、表示項目を選ぶことを4回繰り返します。
設定をすると、サンプルで登録しておいた英単語データであるhamburgerの登録情報が表示されます。本文には、お好みで「覚えている?」などの定型メッセージを入れておくことができます。これは普段書くメールと操作方法は変わりません。
最後に、今回作成した自動処理に名前を付けておきます。「7日後通知」としました。
自動化処理は、最後に画面右上のPublishボタンを押して完了です。これでメールの自動通知処理の設定が終わりました。
これで単語を登録した7日後に、メールで下記のような通知が届きます。
10. 入力候補を表示して、登録作業を快適にしよう
さて、最後にもう1つだけ、アプリが快適に使えるようにするために、カスタマイズをします。
英単語登録の入力項目のうち「暗記レベル」は、今のままだと、ユーザが自分で文字入力をする必要があります。単語の登録をするたびに、毎回、「まだ覚えていない」や「もうちょっとで覚えられる」「もう覚えた」と打ち込むのは面倒ですので、ここはプルダウンメニューで入力候補から選べるようにしたいところです。
Tablesタブをクリックし、表示された画面の「+」ボタンをクリックします。下記のメニューがポップアップしますので、下段のAdd a blank tableを選びます。
- Import CSV file:CSVファイルを取り込む
- Add a blank table: 空のテーブルを作成する
表計算シート形式のテーブルが表示されたら、暗記レベルを入力します。これが、入力候補として表示されることになります。ついでにTableの名称を分かりやすい名前に変えておきましょう。今回は、「Progress」と名付けました。
次に、Builderアイコンをクリックして、画面が確認できる画面に移ります。
表示されたアプリ画面の「(暗)記レベル」をクリックします。少し見にくいですが、ボックスが二重になっており、クリックするのは内側のボックスです。 ※なお、画面を自動生成した場合、下図のように「記レベル」のような表記になりました。(Amazon Honeycodeの仕様のようです。)
(暗)記レベルのボックスが正しくクリックされると、画面の右側に下記の画面が現れます。ここで、現在、手入力しなければならない暗記レベルを、入力候補から選択できるようにするため、「(暗)記レベル」ボックスと、先に作った暗記レベルの定義表とを結びつけます。
※Amazon Honeycodeではプルダウンメニューを「picklist」と呼びます。
まず、「(暗)記レベル」をクリックすると、画面右側に下記のDATA CELL PROPERTIES画面が現れます。その画面に表示されるタブのうち「DISPLAY」タブに移ります。そこでFormat selection as:のプルダウンメニューから、Rowlink & picklistを選択します。
次に、Set source typeのプルダウンメニューからTableを選び、更にその下のSet source tableのプルダウンメニューから、暗記レベルの定義表に付けた名称のProgressを選択します。
これで入力候補の設定は終わりです。確認は、画面右上のViewAppからアプリを立ち上げ、立ち上がったアプリの+Addボタンを押して単語登録画面を表示させます。下記のように入力候補が出てくるはずです。
11. 完成
以上でアプリの開発は終了です。
モバイルアプリとして利用する場合には、スマホのアプリストア(iOSならApp Store、AndroidならGooglePlay)からAmazon Honeycodeをダウンロードします。ダウンロードが完了し、スマホにAmazon Honeycodeがインストールされたら、自分のアカウントでログインすると、さきほど完成させたアプリが一覧に表示されます。
私の場合、Androidスマホですが、下記のような画面で出来上がりました。
一覧表示画面 | 英単語の登録画面 | 英単語ごとの詳細画面 |
これで今日から、自分で開発したアプリで英単語の勉強をすることができます。
このようにローコード開発ツールは、プログラミングが全くできなくても、アプリを開発することができます。ToDoアプリなど簡単なアプリであれば、テンプレートがあり、今回の学習アプリよりさらに簡単に開発することができます。これまで敷居が高かったアプリ開発が容易になる、非常に将来性のあるツールですので、ぜひみなさんも体験してみてはいかがでしょうか。