英語を身につけてビジネスに役立てる方法

三菱総研DCS金融営業部の中村と申します。
今回は英語を身につけてビジネスに役立てる方法について考えていきたいと思います。

<はじめに>
英語を必要とする業務は数えきれないほどあると思います。
足元当社・当部においても、金融系のお客様業務支援にあたり、海外の方とのメールや会議でのやり取り、ドキュメンテーション等で英語を用いる場面が多々あります。

英語で仕事ができるようになると、例えば以下のような良いことがあります。

・プロジェクトで関係している人達の会話のうち、雑音でしかなかった英語が
 聞き取れるため、より円滑に会議の中身を理解することが出来る
・英語で書いているというだけで読まなかった注意書きも認識することができ、
 直訳の日本語よりも親切かつ分かりやすい記載であることを実感

具体的な仕事の内容としては、設計書の翻訳(和訳、英訳)、オフショア開発であればブリッジSEとのやり取り、チャットや電話でのメンバーとのやり取りによるシステム運用など、英語力の生きてくる場面がいろいろと想定できます。大袈裟かもしれませんが、ビジネスの幅が広がることにより年収が大きくアップするかも知れません。仕事のパートナーが仮に「日本語の話せない外国人(英語でのみコミュニケーションが可能)」でありビジネスチャンスを逃してしまった時は「英語を話せればよかった」と思うことでしょう。

英語力を上げるには語学留学、英会話教室、オンライン英会話、独学などがありますがその中でも語学留学、英会話教室などは金額面や通うための纏まった時間が必要など、色々とハードルが高いです。

このため、今回はこの中で、英語の世界に踏み込むために、独学で進めることを提案します。そして、よく耳にされるであろう一定の基準「TOEIC700点」に照準を合わせ、取得する方法を考えていきたいと思います。なぜTOEIC700点なのかについては以下でご説明します。

    目次
  1. なぜTOEICか
  2. 「700点」を取る方法
    1. 心構え
    2. 単語
    3. リスニング
    4. 音読
    5. おすすめの教材
  3. まとめ、達成した後

1.なぜTOEICか

「仕事に必要となる英語力」とは、一体何がどの程度できることでしょうか。

国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)では、TOEICのスコアについて、

470730をレベルC
 日常生活のニーズを充足し、限定された範囲内では業務上のコミュニケーションができる。
730860をレベルB
 どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている。

と定義しています。一般的にもTOEIC700点あるといろいろな側面において有利と言われています。

一方で、TOEICは手段であって目標ではない、と言われることもあります。
至極ごもっともな意見ですが、キャリアアップに英語をと考えた際に壁が高く感じ、何からやっていいか分からないという場合、TOEICのスコアを頼りにして学習に励むことが、目標も明確であり分かりやすく、また手段として取りやすいことも事実です。

また、TOEIC700点を取得しても結局話せない人が多い、と言われることもあります。
700点取っても話せないのならやらない方がましという意見を聞くこともありますが、それは違います。700点取るためには、以下で記載するような、決して避けては通れない道を経る必要があります。
話す機会が得られれば、英会話の上達速度は格段に違うでしょうし、自信を持って臨めるはずです。是非その下地を作りましょう。

2.「700点」を取る方法

2-1.心構え

・やると決めたら、何のためにやりたいのか、どうなりたいのかをイメージしましょう
    ⇒通訳なしで外国人の同僚と仕事の話をするとか、英語での電話で
   ”wait a minute”(チョットマッテ)以外の対応ができ、用件が聞けるようになるなど。
・できない言い訳はいくらでも考えつくので、続けられる仕組みを事前に考えておく
 ⇒通勤電車の中ではスマホを封印して、20分(往復で40分)参考書を読む、
  問題を解くなど。昼休みに20分捻出できるかもしれません。
・記録する
 問題を解いたら日付と要した時間(リーディング)、正答数
 音読したら、日付と回数
 ⇒記録する場所は解説のページなどどこでも構いません。
  要した時間が短縮できたり、正解率が向上したり、回数が増えることで
  モチベーションの維持につながります。

少し話がそれますが、机に向かって集中して学習できるまとまった時間がないから続けるのは無理と思っていませんか。後に触れる単語の暗記や問題の回答は移動中の方が脳はよく働くので、あえて上で通勤電車と記載しました。歩いていても新幹線に乗っていても動いていることに変わりはないので、同様に脳はよく働くそうです。

机に向かわなくてもスキマ時間で1時間(上記の例)くらいなら、勉強時間は作れそうではありませんか。最近は在宅勤務の方が多いと思いますが、その場合は散歩や外出に置き換えて頂いて結構です。

以下、2-2.から2-5.まで項目を上げましたが一度に全部やる必要はありません。興味のあるトピックだけでも取り組んでみて続けられそうと思えたら徐々に広げてみて下さい。

2-2.単語

・単語を覚える意味
文章を読むときにストレスに感じるのはなぜだと思いますか。それは知らない単語が一文に何回も出てくることに他なりません。知らない単語は飛ばすか、意味を考えて、などと言われますが限度があります。実はTOEICで使用される単語は非常に限られます。TOEIC用の単語本を1冊しっかり覚えるつもりで取り組めば、かなり問題本文を読めるようになるのです。
気分的にプレッシャーをかけないために、問題文の中の知らない単語を一気に0にするのではなく、10から3程度に減らすよう頑張ろうくらいの気持ちで始めてみては如何でしょうか。

また、単語についても、

①見たことがない
②見たことはあるが、思い出すのに少し時間がかかる
③瞬時に意味が思い浮かぶ
というレベルを意識し、①⇒②へ、②⇒③へ仕上げていけるとよいと思います。繰り返しになりますが、TOEICの単語本には「こんな単語、今後出ない」などというものはありません。(難単語だけを編集したものは除きます)
TOEICに関係ない場面でも必ず役に立ちます

・単語本について
 TOEIC用の単語本は1,000語くらいで構成されているものが多いですが、1,000語覚えると思うと気が重くなりますね。難易度で易しい単語から並んでいる本もありますが、標準的な単語本を、上記①~③に当てはめてみると以下のような難易度構成となっています。(高校まで英語を学習して、その後数年触れていない想定)
①見たことがない(約300語)
②見たことはあるが、思い出すのに少し時間がかかる(約400語)
③瞬時に意味が思い浮かぶ(約300語)

どうでしょう。②は少し頑張ればやっつけられ、それから①に取り掛かるなどと計画を立て、1冊を攻略してゆきます。
それに加えて、改めて単語本を眺めると、知っている単語だが自分が知っているのと違う意味の方がよく使われるものとか、外来語の名詞としてよく使用されているのに、同じ形で動詞でも使用されるものがあるなど学びがあると思います。

余談ですが、記憶について、少し考えてみたいと思います。
「もう年だからものを覚えられない」
「もの忘れが激しい」ということを耳にすることがあると思います。

最近の研究では、80歳を超えてもものを覚える能力は衰えないという報告もあるのですが、そのように能力が衰えない人は「特別な人だけだ」と思いますか?英単語に限らず、ものを覚えよう、忘れないようにしたいと思っている人向けに、脳科学者の池谷裕二さんの脳をだますという本をお薦めしたいです。

出典元:
のうだま1 やる気の秘密 | 株式会社 幻冬舎 (gentosha.co.jp)

脳自体に出来/不出来はなく、脳は、これを忘れたら非常にマズイことになる(自分の住所や家族の誕生日など)というその人の「気持ち」を加味しながら、それらの項目を脳の特別な(忘れない)箇所に配置します。また、しつこく入ってくる情報や、意外な出来事など印象に強く訴えかけられると、この情報も相応の場所に配置します。そして、毎晩寝ている間に、いらないと思う情報(殆どらしいです)を判別して消すそうです。一生使わないと思った単語を翌日スッキリ忘れられているのはこのためです。
ですので、忘れることにがっかりするのではなく、正常動作をしていると考え、しつこく(しつこく繰り返すのは脳の能力ではなく、気持ちのあり方です)覚える作業を何日も繰り返します。そして、脳をだましてやるということです。

また関連付けという動作は年齢を追うごとに磨かれ、似ている単語を一緒に覚える、語源が一緒で派生している単語を覚える、業務や趣味と紐づけるなどの能力が発達するそうです。
何より、もの覚えが悪くなったなんて認めたくないですよね。

2-3.リスニング

当項は少し難易度の高いものを記載しました。もし、歯が立たないと思われたとしたら、ここ(リスニング)は後回しにして気が向いたときに試してみて下さい。

文章(TOEIC問題集(※2-5参照)のPart4(40秒程度の説明文ナレーション問題)がおすすめです)を読んで、
①知らない単語を調べ、本文の和訳を理解する。
②アプリ(※2-5参照)で0.7倍速に落として聞き、単語の音のつながり、殆ど発音されていない文字などを気にして聞く。
(聞き取れなかった単語は、「実は知っている単語なのに!」というものが
 殆どなので、その音の違いに気が付ければ、こっちのものです。)
③ ②ができたら同様にアプリで1.0倍速、1.2倍速、1.5倍速でそれぞれ一回ずつ聞き、その後1.0倍速に戻して聞きます。速いと思っていた音が実は思ったほど速くなかったと思えたら進歩です。

ポイントは内容の分かっている文章をしつこく繰り返し聞くところです。
(似た言い回しに反応ができるようになり、文章を単語毎ではなくカタマリで聞けるようになります)

ご注意頂きたいのは、初めて聞く音源(問題文など)を意味が分からなくても聞き流しているといつか聞き取れる日がくると思われがちですが、そんな日はやってきません。理解した文章を繰り返し、それこそ10回以上~覚えてしまうくらい聞くことが一番の近道です。飽きるくらい聞いた、となったら2-4で触れる音読に使用して頂いても構いません。(リスニングと音読の教材は相互に使用できます)

2-4.音読

出せる音は聞き取れると言われます。
逆になぜそのような音になってしまうかが分からず、自分の頭の中にあるカタカナ英単語で待ち構えていても、なかなか溝は埋まりません。音源(ナレーション)をマネして少しでも近づけることで、溝を埋める(こちらから歩み寄る)イメージです。
音読は特におすすめです。理由は、

・短時間で達成感が得られる
・ストレス発散。発声なので健康によい
・読んで覚える、書いて覚えるに加え、音読の音を聞くと印象に残りやすい
・何回も口に出してみないことには、いざまるっきり同じことを言おうとしても口をついて出てこない

以下、流れです。

①文章(TOEIC問題集のPart4の文章がおすすめです)を読み、
 知らない単語を調べ、文章全体の訳も理解する。
②音読を5~10回、自分がつまずかないと思うレベルまで繰り返す。

(以下は、難易度高めなので、いつか気が向いた時に試して頂ければ結構です)
③ナレーターの音源に重ねて読む(アプリなどで0.7倍速などに落としてもOKです)
(これをオーバーラッピングと言います。ネットでググって頂くと詳細の説明
が参照できると思います。)
④ついていけないと感じたところは上記のとおり0.7倍速で聞いてみて、どんな音のつながり、思っているのとどこが違うのかを確認しマネしてみる。(ナレーターは必ずしも単語ひとつひとつを話していないのに、読む側(我々)は単語をひとつひとつ読もうとする傾向があります。)
⑤オーバーラッピング(音読)がつまずかずにできるようになったら、その文章の話者になりきって、誰かに話しかけるように気持ちを入れて読みます。声優か、俳優になったつもりで抑揚をつけます。

2-5.おすすめの教材

・単語本
 TOEIC L&R TEST出る単特急 金のフレーズ(朝日新聞出版 税込979円)
 ⇒単語だけでなく、記載されているフレーズがよく使用される形なので
  そのまま覚えることで、問題文が読みやすくなります。

朝日新聞出版 最新刊行物:書籍:TOEIC L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ (asahi.com)

・問題集その①
 TOEIC公式問題集(一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会:
          現在は9まで出版されています)
 ⇒本番のテストと同じナレーターなのでナレーターにも慣れます。
 ⇒使用される語彙、全体の単語数が本番とほぼ同じなので、時間配分など感覚がつかめます。
 ⇒何回も繰り返し解きます。答えを覚えてしまうところもあるかも知れませんが、100%正解できて、正解の根拠を説明できるところまでやります。
 ⇒Part1Part7毎の対策で始めに重点を置くべきなのはPart2(リスニング)と
  Part5(リーディング)です。理由は1問が短いので、取り組みやすいことです。
  その他のPartは長文になってきますが、Part2,Part5の積み上げと思ってまずは
  Part,2,Part5の正答率を上げると良いと思います。

公式教材・問題集|【公式】TOEIC Program|IIBC (iibc-global.org)

・問題集その②
 TOEIC® TEST 特急シリーズ(朝日新聞出版)
  上記の単語本に限らず、文法、読解、リスニング、模試など各種出版されているので本屋で立ち読みしてみて下さい。大きさが文庫本サイズなので、持ち運びにとても便利です。

朝日新聞出版 最新刊行物:書籍:TOEIC® TEST 特急 シリーズ (asahi.com)

・アプリ
 abceed(エービーシード iOS,Android)
 ⇒TOEICの公式問題集を始め、各種の問題集の音源が無料でスマホに
  ダウンロードできます。音源は0.5倍速~2.0倍速まで変速可能です。

AI英語教材 abceed(エービーシード)

3.まとめ、達成した後

TOEICは一般的な資格試験とは異なり合格・不合格の判定ではありません。結果のスコアでがっかりすることもあるかも知れませんが、自身のハイスコアを50点ずつでもよいので上げていきましょう。そしてそのことの繰り返しです。
700点というスコアを目指すために、記載してまいりましたが、どこらへんで700点?と思われた方もいると思います。単語で+100点、リスニングで+50点、音読で+50点、合計で+200点。
現在400点の人であれば600点ですが、英語学習が習慣になればもう100点は継続することで達成可能と考えます。

700点が取れたらきっと、こういう勉強方法も試してみたい、オンライン英会話にも挑戦したい、など、景色が変わることと思います。
取り組み方を書いてきましたが、これらはあくまでも提案で、正解はありません。
この方法がよい/好きという自分にあったものを見つけて続けてみて下さい。

最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。
英語を活用することで皆様が更なるキャリアアップにつなげて頂けることをお祈りしています。