ロボット初心者が教える「ロボット操作講習会」

はじめに


三菱総研DCS デジタル企画推進部の新井です。

弊社では、介護施設と教育現場でコミュニケーションロボットを利活用することを目指し、サービス化に向けた実証実験を行っています。

実証実験を行う介護施設や学校でロボットを操作いただく方々に向け、先期から「ロボット操作講習会」を行っています。私は講習会の企画・運営を担当しており、講師として、実際に講習会でロボットの使い方・活用方法をレクチャーしています。

タイトルにもある通り、私はロボット初心者でした。このプロジェクトに参画したのは約10カ月前で、それまではロボットに触ったことはほとんどありませんでした。

今回は、そんな私が「ロボット操作講習会」を行うことになった経緯、行ったことをご紹介します。あわせて、介護施設でロボットを用いたレクリエーション*を行うための操作講習会を一般モニターの方に実施した結果についてご紹介します。

*デイサービスなどの多くの介護施設では、介護サービスのひとつとして、1日のなかに施設利用者が参加して行うレクリエーションの時間が設けられています。

    目次
  1. なぜ操作講習会をやるのか?
  2. 操作講習会をつくる
  3. 一般モニター検証でわかったこと
  4. まとめ

なぜ操作講習会をやるのか?

ロボット操作講習会を行うことになった経緯は、シンプルです。

冒頭でご紹介させていただいた、介護施設で行った実証実験において、レクリエーションの時間にロボットを活用することの課題として、「ロボットを準備することに煩雑さを感じる」というアンケート結果があったからでした。

介護職員の方々でロボット操作に慣れている方はゼロに等しいですし、機械を触ることに苦手意識を持っていらっしゃる方もいらっしゃいます。せっかくロボットをレクリエーションで使用することで、レクリエーションを楽しんでいただけるようになったのに、「準備の煩雑さ」が理由で使うことを躊躇わせてしまっているのはもったいない。そのようなことから、介護施設や学校で使っていただく前にしっかりとしたサポートを行おう!と、操作講習会を企画しました。

また、ロボット初心者だった私が担当になった理由もシンプルで、「最も講習会受講対象者に近いから」でした。

ロボットのアプリ開発をしているメンバーの方がロボットに詳しいことは明白ですが、ロボットのことを全く知らなかった私だからこそ、使う人がどこで躓くか、どう説明してほしいかがわかる。
わからないことが武器になるとは思いませんでしたが・・・(笑)
とりあえず資料作りからやってみることにしました。

操作講習会をつくる

まず、ロボットアプリ開発担当者の方から、一通りの使い方を教えてもらいました。
そして、もともとあったロボット操作説明資料を参考にしながら操作方法を覚え、資料作成と講習会の企画に取り掛かりました。 

実際の資料を公開することは難しいので、講習会をつくっていく中で意識した5つのポイントをご紹介します。

1.操作体験パートを設ける

全体で約1時間30分の講座となるため、講師が一方的に話すだけでは飽きてしまいます。講師がロボット操作をやってみせるだけでなく、受講者にロボット操作を体験してもらうパートを作りました。そうすることで、ロボットを触ることへのハードルを下げ、「意外とカンタン!」と感じていただけるようにしました。

2.「できる!」体験を積み重ねてもらう

1点目に挙げた”操作体験”を比較的簡単な操作から講座に組み込みました。講座が進んでいくにつれてできることが増えていけば、ロボットに対する苦手意識を克服することができるのではないかと考えました。

3.ロボットと触れ合いやすい工夫をする

ちょっとした工夫ですが、休憩時間に入る前は必ず操作体験で終わるようにしました。単に講座の中に操作体験パートを設けるだけではなく、休憩時間前にロボットに触る時間があることで、休憩中にもロボットに触ってもらいやすくしました。

4.できるだけやさしい言葉をつかう

ご説明したとおり、この講座を受講いただく方のITリテラシは高くありません。また、IT会社にいると、一般的でない言葉を使ってしまうこともあります。専門用語をなるべく使わずに、やさしい言葉で言い換えることを意識しました。

5.文章を極力減らし、イメージで伝える

写真やイラストなどのイメージの方が、伝えたいことが伝わり易くなります。文章を読まず、写真やイラストを目で追うだけでも、操作方法をイメージできるようにしました。

一般モニター検証でわかったこと

社内レビューを経て、一般モニターの方に対して、操作講習会を実施しました。

■モニター検証概要

参加人数 5名(男性:女性 1:4)
年齢 60代1名、70代以上4名
内容 講義受講後、アンケートに回答


■アンケート結果とわかったこと

講義の内容については、全ての方に理解いただくことができました。


操作講習会で習得できたものを問うアンケート結果からは、過半数の方に『ロボットの起動・終了』と『介護施設のレクリエーションで使用するアプリについて』の2パートについて、講座の中で習得できたと回答いただけました。
この2パートは操作体験を中心としていたため、体験型の講義にしたことによる効果もみられました。自由回答では「ロボットを体験したから講義を楽しめた」というようなお声もいただきました。

また、講習会の最中には、「かわいいね」「頑張って!」など、
ロボットを褒めたり、応援したりする声掛けも見られ、受講者がロボットを身近に感じている様子も見受けられました。

その一方で、ネットワーク接続方法などの設定については、「理解するのが難しい」、「わからなくなったら誰かに相談したい」といった意見も見られました。実際に介護施設でロボットを使う際には、設定を行う場面は少ないものの、どうしても通り一遍の説明となってしまう部分をどう理解してもらいやすくするかの課題は残りました。また、操作講習会が終わったあとに、受講者が復習できるようなコンテンツの必要性も感じました。

■課題に対する取り組み

一般モニター検証での結果を踏まえ、複雑な設定部分の説明については、ストーリーボードに変更しようと考えています。手順を文字で伝えるのではなく、絵で一連のストーリーとして表現することによって、利用する場面をイメージしやすい形にします。
さらに、操作方法を習得いただくためのツールとして、操作動画の配信を計画しており、現在撮影を行っています。各操作を1-2分程の短い動画にして配信する予定です。今後、ロボットを活用いただく介護施設や学校のみなさまに、ロボット操作講習会を実施したいと考えていますが、コロナ禍において、対面での開催ができなくなってしまったり、開催できたとしても、参加できなかった方へ情報展開がスムーズにできなかったりすることが考えられます。動画であれば、往訪することなく、ロボットの操作方法をイメージと音声で伝えることができますし、何度でも見返すことができます。

まとめ

今回実施した一般モニター検証から、イメージや体験で伝えることによる効果を実感することができました。講習会の中でロボット操作を実践し、小さな成功体験を積み重ねることで、ロボットを操作することへの不安感を払しょくしていけたのではないかと思います。

もっともっとロボットが介護施設や学校で活躍できるように、機能面でのアップグレードだけでなく、ユーザーの立場に寄り添った視点で現場のみなさまのサポートもしっかりと行っていけたらと思っています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
弊社のロボットの取り組みについてご興味がございましたら、是非こちらもご覧ください。

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